会長挨拶

 2014年と2015年の2年間、会長を務めることになりました。学生時代から現在に至るまで本学会に育てていただき、日本の植物バイオテクノロジーの歩みを本学会の発展とともに見てきましたが、これからは、これまでの学会の伝統を引き継ぐと同時に、社会と世界に開かれた学会として新たな方向性も模索してゆきたいと思います。小泉望幹事長、庄司翼会計幹事、溝口剛編集委員長を始め、他の新幹事とも協力・相談しながら、滞りない学会運営を目指します。

 日本植物細胞分子生物学会は前身を日本植物組織培養学会として1981年に発足しました。急速に広がりつつある植物組織培養技術と新しい技術として期待されていた遺伝子工学を我が国の植物科学研究者に普及させ、その成果を社会に還元することを視野に、異なる分野の研究者が集まって、学会を発展させてきました。学会の一つの転機となったのが、1995年に学会名を現在の名称に変更した時期です。当時、「植物バイオ」という夢の技術から生まれた遺伝子組換え植物が社会に容易には受容されないことが明白となり、一方で、分子生物学から分子遺伝学、ゲノム生物学へと生物を深く、広く解析する学問が次々と台頭してきました。本学会がテクノロジーを基盤とする応用分野を主眼とするのか、どんどん深化し巨大化する基礎生物学をおろそかにしないというメッセージを明瞭に打ち出すのか、議論がなされました。学会名に基礎学術領域志向を残しつつ、学会誌名「Plant Biotechnology」に本学会の特質を見ることができます。

 生命科学分野における技術革新は生物や環境に対する研究方法を大きく変革し、最先端研究がより専門化、複雑化、大規模する結果となりました。本学会の関連技術に関しては、New Plant Breeding(NBT)技術が実用化に向けて大きな注目を集めており、遺伝子組換え作物の枠組みを超えて、植物バイオの転機になる可能性があります。一方、次世代シーケンサー技術の普及により、薬用植物や作物個別品種などの多様な植物系統のゲノム解析が現実的になってきました。各種オーミックス解析技法と組み合わせることにより、本学会員が扱う多種多様な植物材料へ最先端技術を適用することが可能となってきています。しかしながら、中小規模の研究室では高価で大規模な先端技術基盤を自ら開発し運用することは非常に困難です。本学会の年会やシンポジウムが最先端技術の普及の場となり、共同研究などを通して、できるだけ多くの学会員に技術革新の恩恵が行き渡ることを願っています。

 学会30周年(2011年)を機に、ロードマップが作成され、幾つかのワーキンググループにより学会のあり方や活動方針について活発な議論がされてきました。そこから上げられてきた意見や提言を尊重しつつ、2年間の学会運営を進めてゆきますが、とりわけ2つの懸案について検討したいと思います。1つ目は、学会の法人化の是非についてです。以前にも、本学会評議員会において法人化について少し議論がなされましたが、他の国内学会の動向を見ながら、検討することになっていました。現在、幾つかの学会が法人化する一方で、法人化しない学会も存在します。本学会にとって、法人化するのが得策なのかについて、充分な議論のうえ、本学会の方針を決定する予定です。2つ目は、学会の国際化に関してです。多くの国内大学院では、日本人大学院生が減少する一方、東南アジアを中心とした外国人留学生の割合が増加しています。留学生にとって参加しやすい学会(大会)に変えてゆく必要性があるのに加えて、海外の関連学会との連携も深めてゆくことが望まれます。本学会と韓国植物バイオテクノロジー学会とは、定期的に合同シンポジウムを開催していますが、学会全体の活動としては学会員に認知されていないようです。このような活動を一歩進めて、数年に一回の頻度で合同大会を開催する可能性について、相手学会と話し合いを始めたいと考えています。

 日本植物細胞分子生物学会のさらなる発展に向けて、執行部が一丸となって取り組んでゆきますので、会員の皆様にはご協力をよろしくお願いいたします。

日本植物細胞分子生物学会会長 橋本 隆